近年、株式会社から合同会社へ移行した会社があります。2006年5月に新会社法が施行されて間もなく、大手外資系の改組が続いてます。
◆合同会社への変更
2007年2月 | 旧)マックスファクター株式会社 新)P&Gマックスファクター合同会社 |
2009年1月 | ユニバーサルミュージック合同会社が ユニバーサルミュージック株式会社と合併 新)ユニバーサルミュージック合同会社 |
2009年10月 | 旧)株式会社西友 新)合同会社西友 |
3つとも外国法人です。
こういった外国法人が合同会社を選択する理由を考えてみました。
◆合同会社は会計監査人監査が不要
税務会計の側面から見ると、株式会社から合同会社へ組織変更することの大きな効果は、金銭面及び事務面での大幅なコスト削減です。
株式会社では、資本金5億円以上又は負債合計額200億円以上の場合、公認会計士又は監査法人による会計監査人監査義務付けられています。
しかし、合同会社の場合、資本金にかかわらず会計監査人監査の必要がありません。
ユニバーサルミュージック合同会社の資本金は295億200万円。合同会社に改組することにより、監査を行わなくて済むようになります。
◆決算公告も義務ではない
さらに株式会社では 、決算期ごとに決算の数字を公表すること(決算公告)が義務付けられています。
通常、「官報」と呼ばれる日本の国が発行している新聞のようなものに決算書類を掲載することになるのですが、この掲載には1回あたり最低でも約5万円がかかります。
決算は毎年あります。つまり掲載料も毎年発生します。中小企業にとっては見過ごせない費用です。
しかしながら、合同会社では決算公告の義務もありません。
◆設立から安い
合同会社の設立費用は、株式会社に比べ半分以下に抑えられます。
設立費用の比較(実費)
株式会社 | 合同会社 | |
定款認証手数料 | 5万円 | なし |
定款謄本発行手数料 | 約2000円 | なし |
登記時の収入印紙代 | 15万円 | 6万円 |
合計 | 20万2000円 | 6万円 |
※電子定款認証を前提としています。
※専門家へ依頼した場合の報酬は含んでいません。
「登記時に必要な収入印紙代(登録免許税)」が合同会社では6万円、株式会社では15万円と大きく異なります。
また、株式会社では必須の公証人による定款認証も、合同会社では必要ありません。
会社設立に必ずかかる税金・手数料ですから、安く済むに越したことはありません。
◆役員変更にかかる費用を削減
株式会社の場合、原則として「取締役は2年」「監査役は4年」と役員の任期が定められています。株式の譲渡制限がある株式会社の場合は、取締役・監査役共に10年まで任期が延ばせることになっていますが、いずれにしても任期が存在することには変わりはありません。
しかし、合同会社には法律上「役員の任期」は定められていませんので、定款で「この会社の業務執行役員の任期は○年とする」のように定めていない限り、任期は存在しません。
よって、
- 実際に役員が変更した
- 役員の氏名・住所が変更になった
ということがない限り、役員変更を行う必要がないのです。
株式会社にしろ、合同会社にしろ、役員に関する事項の変更には1万円の収入印紙が必要になります。
この手続を専門家に依頼するとなれば、別途依頼料も数万円必要になります。
合同会社では、こうした定期的に発生する役員変更手続きに関する費用も削減することができます。
◆配当金の分配比率を自由に設定できる
会社に利益が出ると、出資者(資本金を出した人)に配当金として分配することが出来ます。株式会社では「株の配当金」としてなじみがありますが、合同会社でも同様に配当金を出すことが出来ます。
株式会社の場合、株式をどれだけ保有しているか(どれだけ資本金を出しているか)で配当金の分配比率が強制的に決まってしまいます。
一方、合同会社では、出資の割合だけでなく、特殊技術や営業能力を配当割合に加味できる会社形態であり、あらかじめ定款に定めておけば、資本金の出資比率とは異なる分配比率で配当金を出すことが可能です。
◆万一の時の有限責任
株式会社・合同会社に共通するメリットですが、万が一事業破綻してしまったときに代表者の責任範囲が「無限」ではなく「有限」になります。
個人事業や合資・合名会社では享受できない大きなメリットです。
◆デメリットも多少
良いことづくめのように思える合同会社ですが、最後に少しデメリットをご紹介します。
まず、株式会社と比べると一般的なイメージが少し悪いです。まだ、合同会社という会社形態が、世の中に広く知られていないせいもあるかも知れません。
次に、意思決定について対立が生じると、収拾がつかなくなるおそれがあります。
株式会社の場合は、出資した金額に応じて議決権が与えられますが、合同会社の場合は「どれだけ多額の出資をしても、一人一票の議決権」しか与えられません。
会社にとっての重要事項に関する決議や、会社の経営に関する意思決定を行う場合、一人一票の議決権に不満を持つ出資者が現れないとも限りません。
にわかに脚光を浴びてきた合同会社ですが、デメリットも頭に入れつつ、うまく活用していきたいものです。