外国法人の日本支社設立支援/税務コンサルティングを中心とした日本進出・法人運営支援

外国法人の設立緩和

1.日本法人設立の際の代表取締役の住所要件の緩和
外国人の日本への投資を促進するため、平成27年3月16日法務省より下記内容が発表されました。外国人(非居住者)のみで、日本国内法人の設立が可能となりました。
昭和59年9月26日民四第4974号民事局第四課長回答及び昭和60年3月11日民四第1480号民事局第四課長回答の取扱いを廃止し,本日以降,代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社の設立の登記及びその代表取締役の重任若しくは就任の登記について,申請を受理する取扱いとします。
但し、法人設立で障害となるのが資本金拠出のための発起人(=外国人)の日本の銀行口座がない点です。この場合、日本国内に個人又は法人の銀行口座を持っていない外国人が、資本金払込をするためには、払込をする日本国内の銀行と事前に交渉し、資本金払込の「保管証明書」を発行してもらう必要がありますが、銀行と取引のない外国人が、国内金融機関より保管証明書を受ける事は簡単ではありません。そこで、実務上、1名以上の発起人の内、最低1名は日本居住者である人を加えて、発起人個人が持つ日本国内の銀行口座に資本金の払込をして、「保管証明書」の写しとします。もちろん、日本法人の設立後日本居住者の方が、その保有する株式を親会社である外国会社に譲渡し、最終的に親会社100%出資の日本子会社とすることは可能です。
また更に、外国会社が出資して、日本法人を設立する場合は、発起人以外の日本法人の代表取締役に就任する個人(日本人・外国人問わない。)の日本の銀行口座に資本金を払い込むことも認められています。ただし、登記申請時に発起人による資本金の払込に関する委任状の提出が必要とはなります。

2.日本支店設立の際の日本における代表の住所要件の緩和なし
 平成27年3月23日発表の法務省の「外国会社の日本における代表者の住所要件について」で会社法の改正がない限り、日本における代表者の内1名は、日本国内に住所を要する必要があり、緩和されないとしています。

3.ビザの緩和
従来の平成27年3月以前の在留資格「投資・経営」の在留資格認定証明書交付申請の際には、その会社が法律上成立していることが原則として求められていたので、ビザ申請前に会社を設立しました。しかし、会社設立の際には、資本金の払い込みが必要であるところ、短期滞在の外国人には在留カードが発行されず、したがって日本国内の銀行で口座を作ることができないため、短期滞在の外国人が単独で一人会社を設立することは、事実上不可能のため、日本在住の協力者が一時的に共同で代表取締役に就任しました。日本法人設立の際の代表取締役の住所要件の緩和が緩和されましたが、ビザ申請に関しても2015年4月1日以降は、会社がまだ法的に成立していなくても、定款を提出すれば、ビザ申請が可能となりました。

4.経営管理ビザ申請方法は2通り
2015年4月以降の経営管理ビザの場合は、従前の投資管理ビザとは異なり、会社設立(登記完了)と経営管理ビザの申請・取得の前後に2パターンが存在するようになりました。
1)会社設立の後に、ビザを申請するルート
会社を成立させるためには、登記の前に資本金の払い込みを行わなければなりませんが、払い込みを行うためには発起人の銀行口座が必要です。設立する外国人がすでに日本国内に銀行口座をお持ちか、または、銀行口座を有している他の外国人又は日本人の協力者が必要な方法です。
2)経営管理ビザを取得した後に、会社の設立登記をするルート
今回の入館法の改正では経営管理ビザに在留期限4ヶ月が新たに設けられました。この趣旨は、定款を提出してビザ申請をした法人未成立(法人登記未了)の申請者には在留期限4ヶ月の経営管理ビザを与えることで、入国後に会社設立登記(法人設立)を行う機会を与えようとするものです。すなわち、経営管理ビザの申請者本人または代理人が日本で定款の認証手続きを行い、その定款を添付して経営管理ビザ(4ヶ月)を取得する。次に、経営管理ビザ(4ヶ月)の保有者として日本に入国すると在留カードをもらえますので、それを提示して銀行口座を開設して、開設した銀行口座に資本金の払い込みをして、会社設立をします。登記完了後、保有している経営管理ビザの4ヶ月の在留期限を1年に更新する在留資格更新申請を行います。

5.ビザ申請の際の留意事項
1)定款の事業目的
入管法には、「本邦において貿易その他の事業の経営を行い」と規定されていますが、例示列挙であり、事業内容には制限はありませんが、事業計画で行う事業に絞って設定することが望ましいです。留意点として、店舗が必要な業種は店舗も契約確保をして、営業許可の必要な業種の場合は営業許可までも取得する必要があります。飲食店経営、酒類輸入販売業や職業紹介業、中古自動車売買業、不動産業などは営業許可証が必要となりますので、計画している業種が営業許可の必要な業種かどうかの事前確認も必要となります。要するに経営が可能な限りすぐに開始できる状態まで準備してから入国管理局(以下「入管」とする)へ申請となります。しかし、許認可事業の場合、「短期滞在(商用)」で滞在する外国人が、その在留目的の範囲内で、事前にどの範囲まで会社設立準備を進めることができるのかが明確でないために都度入管との調整が必要でした。しかし、上記(2)の方法の場合は、経営管理ビザ取得後に堂々と在留目的の範囲内で許認可取得を含めた「開業準備行為」を行なうことができますので、特に許認可が絡む場合には、有効かもしれません。
2)賃貸契約の締結による本店住所地の確保
定款作成・認証時には必ずしも事務所所在地が地番まで確定している必要はありませんが、会社登記の際には本店所在地として事務所所在地を地番まで確定させる必要があります。したがって、定款を提出して経営管理ビザの4ヶ月を取得して、日本入国後に事務所や住居の契約をされる場合には、予め、賃貸借契約を結んでくれる不動産オーナーにあたりをつけておく必要があります。なぜならば、経営管理ビザの在留期限が4ヶ月の外国人に対して、事務所や住居のオーナーさんが賃貸借契約を締結してくれるかというと難しいからです。また、事務所については、会社法上はレンタルオフィスの住所地でも会社設立できますが、経営管理ビザの要件を満たす事務所として難しく、入管関連法規が要求する事務所の条件を満たす必要があります。
3)資本金
従来の投資経営ビザ申請では500万円で出資される方が多いですが、入管は、「最低でも」500万円が必要としているのであり、「500万円で十分」という訳ではありません。1000万円を投資したとしても、その投資額では当該外国人が会社の経営を左右することができないときには許可が下りない、とされています。投資金については、どのように形成準備されたものかということも立証責任があります。
一方で、500万円の出資をしなくても、常勤の職員を2名以上雇用できるのであれば、経営管理ビザが許可される可能性があります(本来は常勤雇用者2名以上の代替としての500万円の投資額です)。「常勤雇用者」とは、日本人、または外国人の場合は、永住者、永住者の配偶者、日本人の配偶者、定住者の居住資格をもって在留する人に限られます。したがって、経営管理ビザの申請者たるご本人と、会社の従業員として「技術・人文知識・国際業務ビザ」を保有する外国人が2名いる合計3名の会社では、常勤雇用者2名の要件を充たしません。
4)事業計画書
新設法人の場合は、決算書を提出できないことから経営管理ビザの条件を満たすしっかりとした一カ年事業計画書も必要です。「事業計画書」を提出することになりますが、入管の審査官は、事業の成功度合いに関心はもっていません。しかしながら、「事業の継続性」については、しっかり審査されますので、その点に説得力のある事業計画書を作成する必要があります。
さらに、経営管理ビザの審査においては「実際に経営・管理を行うかどうか」「会社の経営を左右できる立場にいるかどうか」が判断されます。複数の取締役がいる会社の取締役のひとりが外国人である場合、その外国人が会社の経営を左右できる立場にいるかどうか」は、投資額をひとつの要素としながら、総合的に判断されるため、慎重な申請が求められます。
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